山本いぶきさん/声楽/シャロシュパタク夏期講習会/ハンガリー・シャロシュパタク
音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。
山本いぶきさん
山本いぶきさんプロフィール
昭和音楽大学声楽学科で声楽を学ぶ。大学卒業後ソロ活動と共に合唱団での活動を続け、現在に至る。ハンガリー・シャロシュパタク夏期講習会に参加。
― はじめに現在までの略歴を教えてください。
山本 ピアノは4歳頃からやっていたのですが、小学校5年生のときに合唱団に入り歌を始めました。その後、普通高校から音楽大学を受験し、昭和音楽大学の声楽学科に入学しました。卒業後も職に就きながら勉強を続け、混声合唱団に所属、その活動は現在も続けています。
― 今回の講習会に参加したきっかけは?
山本 以前から音楽留学をしたいと思っていたのですが、期間と費用がネックでした。まずは短期間の講習に参加して留学を経験しようと思いました。
― ハンガリーに決めたのはどうしてですか?
山本 はじめはチェコに行きたかったのですが、選んでいるうちに締め切りが過ぎてしまいまして……(笑)。ハンガリーは以前に個人旅行で行った事があり、とてもいい国だったので決めました。それから講習会に日本人が少ないだろうと思ったのも理由の1つです。
シャロシュパタク夏期講習会
― ハンガリーの中でこの講習会にしたのはどうしてですか?
山本 もともとハンガリーで開かれる講習会は数が多くないので、選択肢が限られていました。それから他の国でもそうだと思いますが、首都は騒がしいので、地方に行きたいと思っていました。その条件で探していたら、この講習会を見つけて、歌のレッスン以外にもプログラムが充実しているという事で決めました。
― 先生を選んだ決め手を教えてください。
山本 今回の講習のメインの先生だったからです。
― レッスンはどうでしたか?
山本 アメリカ人の先生で教える事が好きな方でした。専門的な事もわかりやすく、教え方も上手でした。レッスンの雰囲気も良かったです。先生との相性もよく、楽しく学ぶ事が出来ました。通訳はいませんでしたが、レッスンで英語が妨げになる事はありませんでした。
― 山本さんは英語がかなりできるんですね。
山本 いえできません(笑)。でも勉強はしていきました。今回は、アメリカ人の先生が丁寧に話してくださったので、特に問題はありませんでした。
レッスンの最中に
― レッスンは何時からだったのですか?
山本 時間はその回によって様々でした。受講者が何人もいるので、その中でシフトが組まれて発表されるシステムでした。私の場合、2週間の間に個人レッスンが5回ありました。だいたい1日おきで、午前10時からの日もあれば、午後2時からの日もありました。
― 1日おきというレッスンのペースはいかがでしたか?
山本 私にはちょうどよかったです。レッスン以外にも授業がかなりあったので、毎日だと大変ではないかなと感じました。
― レッスンの時間はどのくらいですか?
山本 45分です。時間はわりときっちりしていました。ただ、朝1番目のときと、お昼休み後、1番目のときは、先生が遅れてきたりして、そのときは運が悪かったな、とあきらめていました(笑)。
― 講習会に日本人の方はどのくらい参加されていましたか?
山本 声楽は私を入れて3人、オーボエが2人、全部で5人でした。地元のハンガリーの方が1番多かったですね。あとはドイツ、アメリカの方が多かったです。他にはルーマニアやブルガリアなどヨーロッパ各地からです。アジアから来ているのは日本人だけでした。東洋人は、めずらしかったのか、現地のオフィシャルのカメラマンにけっこう写真を撮られました(笑)。恥ずかしい事に、いまその写真がホームページに掲載されているんですよ(笑)。
ヘンデルのメサイヤ
― 練習はどのくらいできましたか?
山本 講習会が高校の校舎を利用して行われていたので、ピアノのある部屋は限られていました。なので、その部屋は早い者勝ちでした。ピアノがない部屋であれば、いつでも利用可能でした。練習をする時間的な余裕はけっこうありました。
― レッスン以外の時間は何をされていたんですか?
山本 授業や練習があったので、まとまった自由時間はあまりありませんでした。練習したり、洗濯や近所への買い物などに時間を使いました。
― 講習会中はセッションやコンサートは行われましたか?
山本 キリスト教の奉仕の精神に基づいて行われた講習会で、全員にきっかけを与える、という考えからでしょうか、講習会の参加者全員に演奏会で何らかの役割が与えられました。私は、オペラ実習でレパートリーを与えられて、振り付きで歌いました。あとCreative Church という教会でのコンサートと、「メサイア」公演でアンサンブルを演奏しました。プロムナードコンサートは期間中の2週間、後半毎日開かれていました。
― 宿泊先はどんなところでしたか?
宿泊先の部屋で
山本 シャワー付きでトイレは共同の学生寮でした。新しくはありませんが、過ごしやすいところでした。ハンガーがないので、少し困りましたね。ただ、近所に大きなスーパーがあったので、必要なものはそこで購入することができました。
― ご飯はどうしていましたか?
山本 寮食が準備されていました。朝は、パン、ハム等、紅茶、とかなり質素、夕飯はメイン料理に小皿、とそれなり、昼はメイン、スープ、デザートと量もあり豪華でした。インスタント食品を準備していけばよかったな、と思いました。1、2回外食しましたが、ほとんど寮ですませました。
― 外食はどのくらいのお値段でしたか?
山本 外食すると、1人1000円くらいです。近くのレストランで、みんなで食べることもありました。
― 講習会の会場と宿泊先はどのくらいの距離でしたか?
山本 歩いて1分ほどの近いところでした。駅も学校から徒歩5分ほどのところにありました。
ハンガリーを満喫
― スリなどの被害に遭う事はありませんでしたか?
山本 ありませんでした。夜は外出しなかったので分かりませんが、昼は静かな田舎町、といった、とても良い雰囲気でした。
― 海外の人とうまく付き合うコツはありますか?
山本 積極的な姿勢が大切だと思います。
― 言葉は壁になりませんか?
山本 ハンガリー人は英語がペラペラの人もいれば、全く出来ない人もいたのですが、英語ができる生徒さんや事務局の方が通訳をしてくれました。ハンガリー以外の国の方や先生は英語が堪能でした。言葉についてはどうにかなるので、やはりこちらから働きかけるようにすることが大切だと思います。
世界に友達ができた!
― 今回講習会に参加して良かったと思える事はありましたか?
山本 レッスンが充実していたことと、海外の方と共演できたことです。
― 留学を振り返っていかがですか?
山本 ヨーロッパに留学するのが夢だったので、行ってよかったなと思います。それから、今まで自分が日本で学んできた事と、今回の講習会で習った事が大きく違わなかったので、今までしてきた事に自信を持てるようになりました。
― 留学前にしっかりやっておいたほうがいい事はありますか?
山本 英語とイタリア語の勉強をもっとしておけばよかったと思います。それから、イタリア語の辞書は準備していくべきだったと感じました。日本以上にテキストを重要視しました。単語の意味を調べるのに辞書が必要になりました。重かったのでやめたのですが、やはり持っていくべきでした。あとはアリアだけではなく、ドイツ、イタリア歌曲も用意していって、先生に聞いてもらいたかったです。
― 向こうで新しい譜面が必要になることはなかったのですか?
山本 レッスン中に新しく課題曲をもらうこともありましたが、持っていない楽譜の準備は、事務局のスタッフがしてくれました。
― 日本と留学先で大きく違う点を教えてください。
山本 ハンガリーに限った事ではないと思いますが、積極性が強いと思います。自分から言わないと何も始まらないので、授業の参加の仕方でも、自分から歌い、質問していくという姿勢を求められます。
講習会で更に一歩上を
― 今後留学する人にアドバイスをお願いします。
山本 行ってみる価値はあると思います。日本人の少ないハンガリーでも、日本人の多い、例えばウィーンでも大切なのはやはり積極性だと思います。
― 今後の活動のご予定を教えてください。
山本 合唱やアンサンブルをしていますので、続けていきたいと思います。それから、1年や2年といった長期間留学するのは大変なので、機会があればこういった短期間の講習会にまた参加したいと思います。
― どういった講習会に興味を持ってらっしゃるのですか?
最初、チェコに留学したいと思っていたのは、興味がある講習会があるからでした。オラトリオを古楽器で演奏するのが目的なのですが、そういった演奏の目的を持つ講習会にも参加したいと思っています。
建物の内部・・
― 現在、活動は合唱やアンサンブルでされているんですか?
山本 目標はもちろんソリストですが、合唱での活動も続けていきたいです。
― 今日は、貴重なお話をありがとうございました。
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山本いぶきさんからのアドバイス
【留学先に持って行った方が良かったもの】
1 イタリア語の辞書
2 黒ブラウス→日本で合唱の舞台は白ブラウス・黒スカートですが、
あちらは上下「黒」でした。楽器の方は黒・黒が基本なので持っていましたが、
声楽の私はうっかりしてました。黒ロングスカートは持っていったので、黒ブラウスを借りました。
3 2007年夏は、シャロシュパタクで日本円の両替はできませんでした。
4 参考にした本。
「音楽家の英語入門〜レッスン・留学のために」
三ヶ尻 正 著