尾野文香さん/ピアノ/クールシュベール夏期国際音楽アカデミー/フランス・クールシュベール

音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。

 

尾野文香さん
尾野文香さん

尾野文香さんプロフィール
3才よりヤマハ音楽教室にてピアノとエレクトーンをはじめる。1996年PTNAピアノコンペティション全国決勝大会ベスト20位、1997年全日本学生音楽コンクール名古屋大会第2位、1998年ウィーン音楽コンクールインジャパン本選第1位。その後、ウィーンの講習会に招待され、ウィーンにて入賞者コンサートに出演し、ウィーン市長賞を授与。2002年、2003年ショパン国際ピアノコンクールin Asiaにて本選入賞など数多くのコンクールにて入賞。コンサート歴も多く、ピアチェーレ・コンサートシリーズ「あおい空」、アルマ21世紀コンサートなど出演。また2007年、アルマ室内管弦楽団と共演。これまでにピアノとエレクトーンを村田恵理子、エレクトーンを市川禎、ピアノを長谷川淳、宮脇恵子、弘中孝の各氏に師事。2007年クールシュベール夏期国際音楽アカデミーにて、パスカル・ドゥヴァイヨンに師事。2008年3月東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業後、4月より同大学大学院在学予定。


―  略歴を教えていただけますか?

尾野 最初はヤマハのグループレッスンに通ってエレクトーンとピアノを一緒にやっていました。その後、小学校2年生頃からピアノを本格的に習いはじめました。エレクトーンは小学校5年生までやっていました。現在は東京音楽大学の4年生です(注:インタビュー2007年8月)

―  コンクールなどへの参加はありますか?

尾野 小学校6年生の時に、今はもうなくなってしまったコンクールなのですが、ウィーン音楽コンクールインジャパンで1位をいただいて、副賞としてウィーンの講習会を受けさせていただきました。

―  今回クールシュベールの講習会に参加したきっかけを教えていただけますか?

尾野  幼い頃から、留学したい気持ちは漠然とあったんですけれど、現実的に進路として考えた時に決めきれずにいたんです。そこで、やっぱり日本でいろいろ考えているよりも、実際に行っちゃった方が分かる事が多い、と思いました。行く前は、ずっと迷っていたんですよ。「留学したら必ずこうなれる」というのがあるわけじゃないですから。「大変なことも多いだろうし、お金もかかるし」って。でも、やっぱり今留学しなかったら、将来後悔するだろうなって思ったんです。20年、30年と時間が経った時に、「いやぁ、あの時留学しておけばよかったな」って思うのは嫌だったんです。それで、まずは、講習会で留学を体験してみたいと思ったのがきっかけです。

―  いろいろなコースがある中で、クールシュベールを選ばれたのはどうしてですか?

尾野 私の場合、留学することや留学する国を完全に決めていたわけではなかったので、語学を全然やっていませんでした。それで、通訳さんがいるコースが条件だったんです。フランスか、ドイツか、オーストリアか、ポーランドに行きたかったんです。留学に対する知識が少なくて候補が多いのですが(笑)、その中で、いろいろと他の講習会をみて、レッスンの聴講がさせていただける事と、レッスンを聴講してみたいと思う先生方が多かったので、クールシュベールを選びました。

―  パスカル・ドゥヴァイヨン先生を選ばれた理由はありますか?

尾野 はい、以前からパスカル・ドゥヴァイヨン先生のことを、一方的にですが本などで存じ上げていました。ドゥヴァイヨン先生にレッスンしていただくのを本当に楽しみに思い参加しました。

―  レッスンの雰囲気はいかがでしたか?

尾野 すごく楽しかったですし、すごく素敵でした。あっという間に時間が過ぎてしまいました。ドゥヴァイヨン先生はとても丁寧に的確なことを分かりやすくご指導してくださいます。自分自身が曲の準備をちゃんとしていけばいく程、いろいろな事をより深く教えていただけると思います。

―  時間は1時間くらいですか?

尾野 そうですね、日によっては時間が押していたり、次の生徒さんがもう待っているので1時間ない時もあったかもしれません。曲によって日によってという感じです。

―  何回ドゥヴァイヨン先生からレッスンを受けたのですか?

尾野 私の場合は、ドゥヴァイヨン先生に4回、村田理夏子先生が2回でした。

―  なるほど、村田先生はいかがでしたか?

尾野 ピアノ奏法や打鍵についてなど色々と教えていただきました。レッスン後には、留学などの相談にものってくださいました。

―  ドゥヴァイヨン先生のクラスは何人くらいでしたか?

尾野 そうですね、多分20人くらいだったと思います。

―  その中で日本人はどのくらいいましたか?

尾野 半分くらいは日本人だったと思います。外国ですでにドゥヴァイヨン先生に師事されている方もいらっしゃいました。

―  レッスンは通訳を通じて受けられたということですが、通訳は分かりやすかったですか?

尾野 はい。ドゥヴァイヨン先生のアシスタントであり奥様でいらっしゃる、村田先生に通訳していただけたので、すごく分かりやすかったです。

―  語学の勉強は事前にされていかれたのですか?

尾野 いいえ、現地でも「ボンジュール」と「メルシー」くらいしか使っていないです(笑)。特にパリでは英語も結構通じます。大学ではドイツ語を選択していました。

―  レッスンは何時からだったのですか?

尾野 私は夕方くらいのレッスンが多かったですね。

―  先生は丸1日レッスンしているのですか?

尾野 ドゥヴァイヨン先生はお昼前くらいからレッスンをされていたと思います。私は夕方からだったのではっきり覚えていません。先生によっては朝9時からレッスン、という先生もいらしたみたいです。

―  レッスン時間以外は何をして過ごされましたか?

尾野 練習時間が結構制限されていたので、空き時間は聴講をしていました。あとは、友達と周辺を散策したり、ゆっくり食事をしたり、ビリヤード、スケート、卓球もしました(笑)。

―  練習時間は少なかったのですか?

尾野 1部屋を4人で割り振って使うようになっていました。使用時間が9時から21時だったので、1人平均3時間でした。その4人が全員日本人の場合は、わりときちんと割り振ってやっていたみたいですが、私の場合、2人韓国の方がいらっしゃいました。最初は割り振りをしていなくて、いつ練習できるか分からない状態だったので、割り振りをしたい、とお願いをしました。他の部屋で練習しようにも特に最初のうちはみんな気合いが入っていて空いている部屋はありませんでした。

―  韓国の方はルーズだったのですか?

尾野 そうかもしれません(笑)。というより、日本人が細かいと言った方が良いのかもしれません。多分、こちらから提案しなければ、ちゃんと練習時間が決まることはなかったと思います。

―  練習室以外では練習する場所はありましたか?

尾野 多分、なかったと思います。楽器の方は主にホテルの部屋で練習していたみたいです。

―  講習会でコンサートが行われたそうですね。

尾野 はい、講習会で指導されている先生方の出演されるコンサート(主に室内楽)が4回ありました。先生方全員が出演されるわけではないのですが、ドゥヴァイヨン先生は出演されて、すごく素敵でした。

―  生徒さんが出演されるコンサートはいかがでした?

尾野 終わりに2日間に渡って受講生のコンサートがありました。クールシュベールの講習会はとても参加人数が多く、たぶんピアノだけでも100人くらいはいます。ほかの楽器の人も入れると、多分200人を超すと思います。その中での選抜コンサートなので、たくさんの方が少しずつ演奏して、長い時間かかるような感じでした。
 

クールシュベール
クールシュベール夏期国際音楽アカデミー

―  宿泊先はどんなところでしたか?

尾野 すごく綺麗なところでした。

―  食事はどうでしたか?

尾野 朝ご飯と晩ご飯は講習会の費用に含まれていて、朝は宿泊しているホテルで、夜はメイン会場のホテルでいただきました。お昼は近くのスーパーなどで買ったり、お金を払えばメイン会場のホテルでいただくこともできました。クロワッサンやフランスパン、乳製品はやはりおいしかったです(笑)。

―  宿泊先とレッスン会場は遠かったですか?

尾野 歩いて行ける距離でしたが、講習会会場のクールシュベールは標高1850mで冬はスキーができるリゾート地のためとても坂が多いんです。道といえば坂でした。クールシュベールに行かれる方は、運動靴など歩きやすい靴を持っていかれることをお勧めします。

―  尾野さんは持っていかれなかったのですか?

尾野 そうなんですよ。サンダルに後悔しました(笑)。しかも8月なのに、夏とは思えない涼しさでした。長袖なしでは過ごせない気候でしたが、湿度も低いし過ごしやすかったです。

―  日本とは違いますね。

尾野 そうですね。日本で言うと、秋の終わりくらいかも。雨の日なんか、はっきりと「寒い!」と言えるくらいでした。

―  暖房などはちゃんと入りましたか?

尾野 冷房も暖房も特に使った記憶がないので、冷暖房の必要はない気候だったんだと思います。
 

宿泊先のホテル
クールシュベール宿泊先のホテル

―  クールシュベールの街として、治安はいかがでした?

尾野 すごく安全な印象でした。周りからも何かあったというような話は聞かなかったし、私自身も危険を感じるようなことは全くありませんでした。

―  海外の友達はできましたか?

尾野 私の場合、フランス語が話せないので、直接、仲良くたくさん話すことはできなかったのですが、フランス語が話せる日本の方に通訳してもらいながら海外の友達も混ざってお話したり遊んだりすることはありました。

―  日本人以外ではどちらの方が多かったですか?

尾野 フランスの方はもちろんフランス近隣、アメリカなど様々でしたが、韓国や中国などアジアの方が多くいらしゃいました。

―  講習会に参加して良かったと思える瞬間はどんな時でしたか?

尾野 さきほどお話しした、講習会の先生方が出演されるコンサートを観た時ですね。来てよかったと思いました。

―  留学されて、何か自分が変わったところ、成長したところはありますか?

尾野 講習会の期間が短かったので、大きな変化はあまりないのですけれど、今まで海外経験があまりなかったので、行く前の準備だけでも勉強になりました(笑)。思い切って講習会に参加してみて本当に良かった、と思っています。先ずは一歩という感じだったと思います。

―  留学前に準備しておいた方が良いと思うことはなんですか?

尾野 それはもう曲の準備ですね。講習会は素晴らしい先生方にみていただける貴重な機会だと思います。お金も時間もかけて参加するし、先生により深くたくさんの事を教えていただくためにも、しっかりと準備していくべきだと思います。現地では練習時間も限られます。

―  何曲みていただいたのですか?

尾野 ドゥヴァイヨン先生のレッスンは4回でしたが、1回目でショパンのエチュードを2曲みていただいて、2回目でベートーベンのソナタ第1楽章を、3回目はその続きで、4回目でまた別の曲をみていただきました。

―  日本とクールシュベールの違いはどんなところですか?

尾野 いろいろあると思いますが、例えば現地の方の人柄なんかは日本と比べてすごく明るかったですね。フランスに留学されている方は、「こっちに来てテンションが高くなって、リアクションが大きくなった」と言っていました(笑)。そんな雰囲気が、私はすごく好きでした。講習会は短い期間だったし、環境も保証されていたので、留学のいいところばかりを見たとは思いますが、本当に楽しかったです。良い思い出です。
 

クールシュベールの街並み
クールシュベールの街並み

―  今後留学される方にアドバイスしておきたいことは?

尾野 留学したい気持ちがあっていろいろ迷ったり悩んでいる方は、まず講習会に参加するなど現地に行ってみる事をお勧めします。日本で座って考えているよりも、実際に行動した方が分かる事も感じる事も断然多いと思います。講習会では同じ迷いを持っている人も多く参加していますし、すでに留学している人からいろいろお話を聞かせていただくチャンスもあります。

―  尾野さんは今後フランスに行かれる予定ですか?

尾野 そうですね、フランス以外の国にも興味はありますが、本当に楽しかったので、前よりももっと留学したくなりました。講習会の影響です。

―  今後の進路はどうされますか?

尾野 4月からは東京音大の大学院に進学しますが、長期留学も考えています。すごくしたいと思っています。

―  コンサートのご予定などはありますか?

尾野 今度5月にピアチェーレ・ムジカ主催の「ひびき」というコンサートで地元の愛知県でメンデルスゾーンのピアノトリオ第1番を演奏させていただきます。大好きなトリオの曲ですし、しっかりとがんばりたいです。

―  頑張ってくださいね。長い間、ありがとうございました。


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---尾野文香さんコンサート情報------
Musica Da Camera 2008
Concert the Piano Trio

2008年5月31日 開演17:30
知立リリオコンサートホール
問い合わせ:0562-84-0876

Program
ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第三番ハ短調Op.1-3
ベートーヴェン/ピアノ三重奏曲第四番変ロ長調Op.11
メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第一番ニ短調Op.49

出演;
ピアノ
岡田みずほ
三輪富美子
尾野文香

バイオリン
宗川諭理夫

チェロ
内田玲
 

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