新井田さゆりさん/声楽/カリアリ夏期国際音楽アカデミー/イタリア・カリアリ

音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。

 

新井田さゆりさん
新井田さゆりさん

新井田さゆりさんプロフィール
高校3年で歌を始める。鹿野道男先生に師事。現在、東京音楽大学大学院声楽専攻オペラ研究領域在学中。2008年イタリア・カリアリ夏期国際音楽アカデミーでペギー・ブーヴレ氏に師事。2006年より三年連続特待給費生。2007年東京音楽大学卒業演奏会、同年第77回読売新人演奏会、同年埼玉新人演奏会に出演。また、JT主催アフタヌーンコンサートに2回出演。


-簡単な自己紹介をお願いします。

新井田 高校3年生の6月に声楽を習い始めて、それから東京音楽大学の声楽演奏科コースに入りました。現在は、大学院の2年生です。声楽専攻オペラ研究領域に在籍しています。

-高校3年生で歌を始めるまで、専門的に歌を学んだことはなかったんですか?

新井田 はい、なかったです。

-では、高校3年生のときに歌を始めたのはどうしてですか?

新井田 中学と高校が特別音楽に力を入れている学校で、合唱発表会があったんです。そのときに東京音大の先生が合唱指導にいらして、その先生が私の声を聞いて「音大に行ったらどうだろうか」と言ってくださり、その言葉を聞いて、私にもできるならやってみたいな、と思ったのが歌を始めたきっかけです。

-今もその先生に習っているんですか?

新井田 いえ、違います。そのときにその先生に東京音大の鹿野道男先生を紹介していただいて、高校3年生の6月にゼロから習い始めました。

-6月に始めて、それで声楽演奏科コースに合格したというのはすごいですよね。

新井田 もうとにかく必死で勉強しました。始める時期も遅かったので、2月の入学試験までの8ヶ月間は死に物狂いで、脇目も振らずに勉強しました。楽典などの基礎知識もなかったし、ピアノも弾けなかったんです。そうして必死でやっていると、自分でもみるみるうちに声が伸びていくのがわかりました。

-ええ、ええ。

新井田 もし声楽演奏科コースが無理でも声楽科コースで通るだろうと思えるくらいまでは成長していました。その頃は、人前で歌うということも全くしていなかったので、入学試験でも全然緊張しなかったんですよね。それがよかったのか、無事に合格しました。大学入学後の2年間はサボっていて、とても不真面目な生徒だったんです(笑)。でも、大学3年のときに釜洞祐子先生と出会い、先生の手ほどきで音楽の素晴らしさや楽しさを知り、自分で勉強していくことの大切さを知って、今では歌なしの人生は考えられないというぐらい歌を優先しています。

-今まで勉強は大学で主にされてきたんですよね?

新井田 はい、大学で全部やってきました。

 -そうすると海外の講習会に参加されたことはありましたか?

新井田 いえ、ないですね。

-今回、海外の講習会に行きたいと思ったのはどうしてですか?

新井田 アンドビジョンに私の友人が勤めていまして、その友人に留学を考えていると相談したら、いろいろな情報をメールマガジンというかたちで定期的に送ってくれたんです。それで、海外に行きたいとのは思っていたんですが、具体的にどの講習会に参加したいということはなかったんです。そんなとき、たまたまメールマガジンで今回のカリアリの講習会が紹介されていて、講習会の内容うんぬんよりも「サルディニア島に行ける」、「世界遺産の素晴らしい地中海を望む美しい街で講習会ができます」という謳い文句に私は食いつきました。それが一番の動機ですね(笑)。

-海外に行かれたことはありましたか?

新井田 いえ、今回が初めてでした。

-興味があった国はありますか?

新井田 漠然と行くならヨーロッパ圏がいいなと思っていたので、特に国は決まっていなかったです。それから、今、学校で主に勉強している音楽がフランス音楽だったので、フランス語やフランスの文化を知りたいなと思いました。カリアリはイタリアですが、今回の講習会は講師人がフランス圏ということで、それにも興味を持ちました。

ペギー・ブーヴレ先生のレッスン
ペギー・ブーヴレ先生のレッスン

-ペギー先生のレッスンの雰囲気はいかがでしたか?

新井田 ペギー先生って見た目はすごい声を出すんだろうなって思うくらい立派な体格の方なので、私自身はわりと痩せ型なこともあって、ペギー先生との体格の差に度肝を抜かれてしまって、先生についていけるのかどうかすごく不安だったんです。でも、ガイダンスが終わって、先生に挨拶に行ったら、すごく優しい笑顔で迎えてくれたので、安心しました。レッスンもとっても丁寧に教えてくれましたね。もともと日本で勉強してきた声の技術を活かしながら、先生がそれに上乗せしてレッスンしてくれるという感じでした。あまり否定はされずに、褒めて伸ばすタイプの先生でした。

-レッスンで印象に残っていることはありますか?

新井田 ペギー先生が自分で歌って見せてくれるのがとても印象的でしたね。もしかしたら言葉の壁があったからかもしれませんが、理屈とかではなく、英語でもフランス語でも伝わらない部分があれば自分を見本にして見せてくれる、それを真似してみなさいという教え方がとっても印象的でした。

-先生の声はいかがでしたか?

新井田 とっても「ビューティフル」、美しい声でした。低いところから高いところまでムラなく出ていて、音楽に対する知識もすごく豊富で、オペラや室内楽、他の歌曲など、声楽と呼ばれるジャンルならどの曲を持っていっても、それこそミュージカルナンバーを持っていっても、ちゃんと教えてくれる人だと思います。

-新井田さんはどんな曲を持っていったんですか?

新井田 私はプーランクのオペラの声を全曲とリゴレットを持っていきました。

-今度の卒業試験の曲も教えてもらったんですよね。

新井田 教えてくれました。先生の持ち歌なのかわからないですが、私のやりたい曲の主人公の心情になって指導してくれて、素晴らしかったです。うまく説明できないのですが、苦しみの中で愛しているって言いながら死んでいくシーンがあるんです。それを先生がやってくれたんですけど、そのときに椅子の上からズルズルと体を落としていって、「愛してる」って言うのよ、って。そしたら、先生がずり落ちすぎて立ち上がれなくなっちゃって、みんなで助けて、「大丈夫ですか? 先生!」って、起こしたんです(笑)。すごく楽しかったんですが、それぐらい先生は真剣に教えてくれたんですよ。

-先生のレッスンを受けている人は何人くらいいましたか?

声楽レッスン後にみんなで!
声楽レッスン後にみんなで!

新井田 私を含めて9人ですね。日本人が私を含めて2人、中国人が1人、フランス人が3人、ギリシャ人が1人、ナイジェリア人が1人、韓国人が1人。歳はだいたい23歳か24歳でした。

-聴講はされましたか?

新井田 聴講するようにと先生が言ったので、常に部屋には9人生徒が揃った状態で、1人が歌っているのをみんなで聴いていました。

-聴講というスタイルはどうでしたか?

新井田 とっても刺激になりました。自分が教わっているときにわからないことでも、他の人のレッスンを聴講することで、客観的に見えてわかったり、あるいは自分がやっているときに、他の子たちが見て盛り上げてくれて、それによって自分の中で眠っていたテンションみたいなのが出てきたりしました。とても情熱のあるレッスンでしたね。毎回、朝からテンションアップで、先生が言ったことをきちんとできた子がいたり、望んでいる声が出たりすると拍手して盛り上がっていました。

-すごいですね。

新井田 はい。それをいろんな科の子が噂で聞きつけて、歌のレッスンはほとんど満員、日によってはレッスン室に入りきれないくらいギャラリーが増えたときもありました。それくらい明るいレッスンだったんですよ。本当に幸せな一時でした。みんながみんな音楽を楽しんでいる感じがうれしかったですね。

-そういうことって日本ではなかなかないですよね。

ペギー・ブーヴレ先生
ペギー・ブーヴレ先生

新井田 ないですね。多分、ペギー先生の人柄だと思います。さすがですよね。

-レッスンは何回くらいあったんですか?

井田 1時間のレッスンが1人最低4回はありました。朝の10時に始まって、2〜3人受けて、みんなでお昼ご飯を食べに行って、2時くらいからまた2〜3人入って、5時くらいまであって、そのあとは解散か、それぞれ自主練をするという感じでした。

-レッスン以外の時間は練習したという感じですか?

新井田 そうなんですけど、ここだけの話、練習をせずに、みんなで遊びに行くこともありました(笑)。5時にレッスンが終わるので、6時くらいに待ち合わせをして、そのまんまバスで海に行ったりしました。

-他の受講生と仲良くなれたんですね。

ランチタイムにみんなで!
ランチタイムにみんなで!

新井田 本当にとても仲が良くて、みんなで朝ご飯を食べて、レッスンを受けて、海に行って、またみんなで夜ご飯を屋上で食べて……。寮に屋上があって、隣接してキッチンがあったので、そのそばでみんなでご飯を食べました。

-海外の人と仲良くなるコツは何かありますか?

新井田 基本の挨拶をちゃんとすることだと思います。会ったら「Ça va?」って、毎回挨拶していましたね。それから、リアクションをちゃんとするということです。少しでも相手の言っていることが分かれば、「あなたの言っていること、すごくわかるわ」というリアクションをすれば、あなたに対して理解を示しているのよ、あなたととても仲良くなりたいわ、という感じが伝わると思います。今回はみんなその空気を出していて、誰一人として人見知りする人もいなかったんです。とても幸せなことに、みんなと仲良くなりたいと思ってくれている人たちばかりだったので、みんなのおかげで仲良くなれた感じです。

-その人たちとは今も連絡を取っていますか?

新井田 はい。全員と連絡先を交換して、パソコンでメールを交換しています。

-あまり練習はされなかったですか?

新井田 いや、練習もちゃんとしましたよ。学校の中に練習室がいくつかあっって、先生は「聴講するように」と言っていたんですが、あまりにも声の質が違う人や、自分はソプラノなので、メゾの人がレッスンを受けているときはレッスン室を外れて、練習していました。

-どのくらい練習できましたか?

新井田 望めば望んだ分だけできましたね。

-部屋はけっこう空いていたんですか?

新井田 そうですね。歌なので、アップライトでも、あるいはピアノがなくても、発声だけできればいいので、空いている部屋があれば、スタッフの人に頼んで鍵をもらって練習することができました。

-環境はいかがでしたか?

新井田 環境は何の問題もなかったです。窓を開ければ涼しくなるし、窓を開けていても誰にも文句を言われませんでした。

-カリアリの街はどうでしたか?

新井田 坂道がすごく多くて、凸凹した街でした。あるときレストランにご飯を食べに行ったときに、お店が坂道の途中にあって、机と椅子が斜めっていたんですよ。それで、友達が「こんなに斜めっていたら、食べられない、まっすぐにしてほしい」って、お店の人に言ったんですよ。そしたら、お店の人が「いや、それがこの街だから」って。「斜めなのが、この街の特徴よ」と言われました(笑)。いい意味でそんなふうにおおらかで、みんなが街に沿った生き方をしていました。

-景色はいかがでしたか?

新井田 きれいでした。海外に行ったことがなかったので、他の国と比べられないのですが、建物がすごく美しい造りで、どこを撮っても絵になる街でした。

-移動はどうされていましたか?

新井田 バスです。一度故障で停まってしまったときがあって、その日は歩きました。坂道がすごいんですよ、途中に休み休み歩いたので、バスだと10分くらいのところが30分くらいかかりました。

-バスのチケットはどうされていましたか?

新井田 学生寮のすぐ目の前にキオスクがあったので、そこで7日間乗り放題で10ユーロのバスカードを買いました。一度バスに通してから7日間有効で、7日間は乗り放題なので、学校に行くのにももちろん使いましたし、他にもスーパーやレストラン、海にもバスで行きました。とても重宝しましたね。

-バスのダイヤの乱れはなかったんですか?

新井田 ありました。あったんですが、バスの本数がわりと多かったので、あまり困ることはなかったですね。全く時間通りには来ないんですけど、その分思わぬところで拾える感じです。電光掲示板にあと50分後にバス来るって書いてあるのに、すぐ来たりするんですよ。電光掲示板の意味が全くなかったです(笑)。

-バスはわかりやすかったですか?

新井田 はい。日本みたいに親切に停留所のアナウンスはないので、自分で風景を覚えてここで降りるんだなと覚えなければいけませんが、日本と同じようにボタンを押して、降りるという意思表示ができます。ただ、運転はすごく荒かったですね(笑)。でも、歩行者を大切にするんです。ちょっとでも道路を渡りたそうな人がいたら、どんなにスピードを出している車でも停まってくれるんですよ。それは日本と全然違いますよね。運転は荒いですけど、みんなマナーはよかったです。

 -外食ではどんなものを食べたんですか?

新井田 イタリアン料理です。ピザやカプレーゼというイタリアのトマトのサラダ、あとはラザニアやフンギといったパスタ料理ばかりでした。

-おいしかったですか?

新井田 おいしかったです。特にチーズがとてもおいしかったです。ただ、サラダが日本と違って味がないんですよ。オイルで食べるんですよね。だから、ドレッシングを持っていったらよかったかなと思いました。

-いくらぐらいでしたか?

新井田 だいたい1人20ユーロいくかいかないかくらいで、結構高かったですね。なので、ほとんどスーパーで買って自炊しました。

-スーパーは寮の近くにあったんですか?

新井田 はい、徒歩圏内で行けるところにありました。とても大きいマーケットなので、ほとんどのものはそこで揃えることができました。寮はキッチンは付いていたんですが、フライパンなど一切の調理道具がなかったので、みんなで割り勘で買いました。

-仲が良い人がいてよかったですね。

新井田 本当にそうですよね。あとは、日本人がすごく多かったのも、他の科の子と仲良くなれたきっかけです。

-学生寮は安全でしたか?

新井田 それぞれの部屋に鍵が付いていて、外に出るときは鍵を受付に預けるシステムでした。帰って来て、鍵を受け取るときは、自分の鍵の番号を言わなければいけないので、それで棟のセキュリティーが守られていたんだと思います。

-生活面で困ることはありませんでしたか?

新井田 なかったですね。お湯がちゃんと出るシャワーもありましたし、お水も出るし、トイレも水洗トイレですし、冷蔵庫もあったし、電気も点くし、窓もあったし、すごくきれいな部屋でしたね。

-受講者はみんなそこに泊まっていたのですか?

新井田 はい、そうです。カリアリの講習会に参加していないバカンスで来ていた学生も泊まっていて、一般公開で宿泊施設として使っているようでした。話してみたら音楽と関係ないことをしていて、「何でここに泊まっているの?」と聞いたら、「ここはみんなに宿泊を開放しているんだよ」と教えてくれました。そんなふうに普通に観光に来ていた友達もできました。

-何語で話したんですか?

新井田 その人はアラブ系のイタリア人だったので、イタリア語でお話しました。

-イタリア語も話せるんですね。

新井田 学校が全部イタリア語だったので、イタリア語も使いました。寮の友達と話すときは、フランス語や英語だったんですが、お店やレストランやバス、あとスーパーでは全部イタリア語でしたね。

-語学はどのくらい勉強されたんですか?

新井田 フランス語は一応半年間、語学学校に通っていたんですが、それ以外の英語やイタリア語は、学校で文法を習う程度なので、自分でもよく話せたなと思います(笑)。

-英語はけっこう話せますか?

レッスン風景はこんな感じです
レッスン風景はこんな感じです

新井田 聞き取れはするんですけど、返せないこともありました。でも聞き取れたときはリアクションをするので、みんなと仲良くなれましたね。話が通じていると、みんな話しかけてくれるんです。私たち日本人でも、話しかけたときに向こうが“なんて言われたんだろう”って顔をしていると、ちょっとコミュニケーションがとりづらいなと思ってしまって、話しかけづらいと思うんです。“わかっているよ”っていうのをオーバーなくらい出せば、向こうも話しかけてくれますね。

-留学中に困ったことはありましたか?

新井田 特になかったです。バスが途中で停まってしまったときはかなり焦りましたけど、一人じゃなかったので、みんなで仲良く歩きましたし……。一人ではあまり行動しませんでした。なるべく現地のことをわかっている子や、言葉がわかっている子と一緒に行動するようにしていました。

-快適に過ごせたんですね。

新井田 困ったことと言えば、私の帰る日、7日の日曜日に、ちょうどローマ法王がサルディニア島に来まして、一切の交通機関が使えなくなっちゃったんです。ローマ法王を崇める人たちで道路が塞がってしまって、学校から寮に帰れなくなってしまったんです。警察に頼んだんですが、警察は対処してくれなくて、遠回りすれば寮に戻れる感じだったので、人だかりを避けて、こっちの方向だろうと感覚だけで帰りました。遅くなってしまうと、飛行機間に合わなくなってしまうので、必死で帰りました。街のみんながお祭り騒ぎで、いくら私が「寮に帰りたい」ってイタリア語で言っても、全然聞いてくれなくて、むしろ「一緒に盛り上がろう」みたいな……。結局、無事に寮に着いて、目の前の広場から空港行きのバスに乗ってなんとか間に合いました。

-カリアリの人たちはどんな人でしたか?

新井田 おおらかで、陽気でした。みんな笑っていましたね。日本人とかわかると、「ちょっと待ってください」とか「また来てください」とか、話しかけてくれました。

-治安はどうでしたか?

新井田 悪くなかったです。日本と同じような感じでした。悪い人も、ジプシーも、物売りもいなかったです。カリアリはリゾート地だからか、平和な街でした。

-日本と違う点を何か感じましたか?

新井田 大きいお札を嫌うことです。2ユーロくらいの買い物に10ユーロを出してしまうと、もうダメです。「両替してこい」って言われますね。面倒くさいみたいで、おつりをくれないんですよ。一度、43.75ユーロくらいの買い物をしたときに50ユーロで払おうとしたんです。でも、お店の人は0.25とか0.55といった細かいところを払ってほしかったみたいなんです。私はお札しか持っていなかったので、すごく嫌な顔をされて、おつりを小銭で渡されて「グラッチェ(ありがとう)」って言ったんですけど、「アリヴェデルチ(さようなら)」って言われました。普通、ありがとうって言ったら「プレーゴ(どういたしまして)」って返ってくるんですけど、さようならと返ってきて、寂しかったですね。

-他には何かありましたか?

新井田 参考になるかは分かりませんが、イタリアだからといって、コーヒーが特別おいしいということはなかったです。日本のほうが凝っているんじゃないかと思いました。

-向こうの方がこだわっているのは伝統料理なんでしょうか?

新井田 こだわっているというより、普通に味を付けたのが、めちゃめちゃおいしいんだと思います。隠し味っていう感じの味ではなくて、ただ素直にトマトの味がおいしいとかチーズがおいしいとかパンの生地がおいしいとかパスタの生地がおいしいとかそんな感じでした。

-日本食はありましたか?

新井田 中華料理とか日本料理とかどうやらあったらしいんですけど、私は行かなかったです。

-演奏会はありましたか?

新井田 先生たちの演奏会があって、すばらしかったです。ハープやフルートなど、歌以外のプロの演奏会になかなか行く機会がないので、すごくよかったです。

-どこで行われたんですか?

新井田 カリアリの学校のそばにある劇場でした。普通のホールで、真っ赤な絨毯でオペラ劇場のようなところでした。二階建てで、ほんとに広い劇場でした。先生たちの演奏会だけでなく、残っている学生はみんなそこで演奏会をしたようで、「すごくよかった」って後からメールで聞きました。

-留学して、成長したなと思えることはありますか?

講習会の友達と共に。
講習会の友達と共に。

新井田 世界の広さを肌で感じたのは、自分にとっていい経験になりました。自分が幸せな環境で暮らしているということも、日本にいるとわからなくて、世界にはいろんな人がいることを知りました。今回は、音楽の留学ということで集まっているので、それなりに裕福な方も多いのですが、その国その国で、国ごとに文化があって、歴史があって、そんななかでその子たちが育ってきて、生きていく術を学んでいるということが分かりました。

-なるほど。

新井田 一緒に話していても、日本では理解できないような言動や、おやって思うようなこともあったんですが、それはその子たち独自の国民性なのかなと思いました。例えば、日本人はとてもおとなしいと言われるじゃないですか? 私も言われたんですよ、「おとなしいね」、「なんでもかんでも『うんうん』って感じだね」って。それって、やっぱり国民性というか民族性ですよね。いろんな国の人たちと知り合えて、日本人ってそうなんだなって思いました。自分が意志の弱い人間なんだと、自分を知る機会になったと思います。

-参加してよかったと思う瞬間はありますか?

新井田 私が日本で勉強しているということをわかってくれた、ことですね。

-それはどういう意味ですか?

新井田 日本でもこういうふうに音楽を勉強している人がいる、ということを分かってもらえたことです。ヨーロッパの音楽をやっているわけじゃないですか? 日本人がイタリア語で歌って、フランス語で歌って、ドイツ語で歌って……。向こうの人は、言語に対するそういうストレスもなく歌っている。言葉も国も違うけれど、同じ楽譜を見て同じような勉強を日本でもしている女の子が一人いたのよ、と思ってくれる。自分の声で自分の歌を歌うことによって、友達ができたことがすごくうれしかったですね。言葉がわからなくても同じ曲を歌っていることで、心を通わせて音楽を楽しむことができたのがすごくうれしかったです。

-留学前にしておいたほうがいいてことはありますか?

新井田 語学ですね。もちろん全然わからなくても、困ることはないんですよ。なぜなら、結局は音楽で分かり合えるからです。不思議なんですけど、音楽は音を出すだけで、言葉が分からなくても分かり合えるんです。でも、自分の意思を伝えたり、相手の意思を全部わかりたいって思うときに、語学って必要なんです。どんなに大変でも時間とお金をかけて、語学は準備したほうがいいと思います。これははっきり言えます。付く先生にもよるんですが、付く先生が英語もOKなら、英語とイタリア語、カリアリに行くなら、できればフランス語、英語、イタリア語の3カ国ですね。

-今後留学を考えている人にアドバイスをお願いします。

カリアリ劇場にて
カリアリ劇場にて

新井田 勇気を持って、とにかく行くことですね。行くか行かないかって迷っている人に対するアドバイスというよりは、とにかく行けっていうアドバイスです。どんなに他の人が経験を細かく語ったとしても、行ってみないと、自分が経験してみないとわからないと思います。私もわかりませんでした。だから迷っているなら、行くべきだって思いました。

-短期の留学でしたが、身になることはありましたか?

新井田 ありました。私はたった1週間だったんですけど、自分の性格が変わるというか、すごく成長を実感しました。なぜなら、日本にいると刺激ももちろんあるけれど、それに慣れてしまっているんですよね。例えば、外国人が突然「ハロー」って声かけてくるわけじゃないし、誰か困っている人がいても声をかけるわけじゃない。でも、それが外国では当たり前なんですよね。ちょっとでも目が合えば「サヴァ?」と声をかけてくる。そのときに、自分一人で何かを思っていても仕方がないと思うんです。元気なら元気、元気がないなら元気がないと、どんどん自分を出していかないといけない。話しかけられたくなかったら、話しかけないで、という態度を出せばよくて、中途半端はよくないんです。でも、日本人ってどうしても中途半端にして、それが一つの礼儀みたいになってしまっていると思います。濁して、自分の意見をはっきり言わないほうがいい、そういう環境で育ってきている分、成長できることも、どうしてもそこでストップしてしまうんです。海外に一人でぽんと行くことで、そういうことに気がついて、全然違う自分が出てきちゃうんですよ。

-なるほど。

新井田 もちろん、成長するもさせないも自分次第なんですけどね。一緒に参加していた子も、「自分を出すことが恥ずかしくなくなって、分け隔てなく自分を出せるようになった」って言っていました。そういうふうに自己表現に対する考え方が1週間でだんだん変わってきて、「日本に帰ったら強くなっているかもね」なんて、笑って言っていました。

-へー。

講習会終了の最後の夜...
講習会終了の最後の夜...

新井田 でも、日本に帰ってくると、また日本に慣れてしまって、やっぱり日本の生き方になってしまうんですよね(笑)。でも、それはそれで、この国での生き方なんだな、と、そういう考えもできるようになりました。

-音楽に関してはいかがですか?

新井田 そうですね。本場の人に褒められるっていうのは、うれしいですよね。

-今後の活動の予定を教えてください。

新井田 この留学を活かしていこうと思っています。来年も海外で勉強したいなって思うくらい、海外が好きになっちゃいました。すごく楽しみです。自分もとにかく勉強しなくちゃな、と思うことができました。

-今日は本当にありがとうございました。

 

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