北村まりえさん/ピアノ/シュリッツピアノ夏期講習会/ドイツ・シュリッツ
北村まりえさん プロフィール
音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。
鈴木美緒さんプロフィール
愛知県出身。フェリス女学院大学音楽学部演奏学科卒業。同大学院音楽研究科在籍。第12回ペトロフコンクール奨励賞。アジア国際コンクール2007優秀賞。翌年マレーシアで開催された受賞者記念演奏会に出演。これまでに小栗多佳子、小山明子、堀由起子、黒川浩の各氏に師事。2009年シュリッツピアノ夏期講習会参加。
-まずは、北村さんの簡単なご経歴を教えてください。
北村 フェリス女学院ピアノ科を卒業して、現在、同大学院音楽研究科の1年生です。
-ピアノは何歳から始められたんですか?
北村 3歳からです。親もピアノの先生をやっていまして、その影響で始めました。
-今まで、講習会に参加されたことはありましたか?
北村 いえ、今回が初めてです。
-海外に行かれたご経験はありましたか?
北村 はい。去年、マレーシアに演奏旅行で行きました。講習会ではなく、コンクールの関係で。
-マレーシアはいかがでしたか?
北村 マレーシアの現地のツーリストが企画して、様々な場所に案内してくれました。日本人があまり行かない所が多く、とても面白い体験でした。少し危ない感じもありましたが。
-そうだったんですか。では、今回、講習会に行きたいと思ったきっかけを教えてください。
北村 卒業後の進路として、留学も視野に入れてみたいと考えていまして、それにはとりあえず行って、現地の雰囲気を味わってみないことには、と思ったんです。そこで、今回参加することにしました。
-候補地としては、ドイツとフランスでしたよね?
北村 ええ。でも、先生に勧められたこともあり、ドイツに決定しました。
-講習会の参加者は、どのくらいの人数でしたか?
北村 全部で24名で、日本人8人、スペイン、ドイツ、ブルガリア、韓国、イタリア、ロシア、ポルトガル・・・と、世界各国からのメンバーでした。
-楽しそうですね。講習会のスケジュールは、どんなふうに組まれていましたか?
北村 初日に行ったら、ファイルが置いてあり、月曜日から日曜日までの先生のスケジュールが書かれていました。時間割のように、その日ごとにレッスンが組まれていて、コンサートの開催日も書かれていました。コンサートは全部で7回あり、2日に1回くらいの割合でありました。でも、自分がどのレッスンを取れるか、分かるのは前日でした。
-レッスンは1時間くらいですか?
北村 はい。9時半から18時半までの間に、レッスンが行われました。昼休みをはさんで、①語学コースを取っている人は午後、それ以外の人は午前中という感じで、振り分けられていました。
-ハードスケジュールでしたか?
北村 いえ、けっこうゆっくりしていました。練習もしっかり出来ましたし。レッスンは、1日1時間見てもらうだけですから、①語学コースを取っていない人は、時間がありました。
-練習をしつつ、語学の勉強もしつつ、という感じですか?
北村 そうですね。午前中は語学、午後はピアノ、夜はコンサートとディナーという感じです。
-先生は、それぞれどんな感じでしたか?
北村 ナットケンパー先生は、ドイツ系の曲を丁寧に見てくださいました。リーガー先生は、とても優しくて、細かくペダリングも教えてくださいました。ウタ先生は、女性の先生で、細かく見てくれるので人気がありました。実際、ソリアーノ先生に習いたくて参加した人が半数以上でした。有名な方で、先生の授業は希望を出さないと受けられなかったんです。みんなが希望するので、時間がなくて5分で終わっちゃう人もいました。お年を召した方で、すごく優しかったです。先生も、けっこうペダルを使うように指導される方でした。ウタ先生は、ソリアーノ先生のお弟子さんなんですよ。この二人は、古典でもペダリングを入れる先生で、私はあまり使わないので、新鮮な感じでした。
-いろいろな先生のレッスンを受けられたんですね。レッスンで印象に残っていることは?
北村 リーガー先生のレッスンのときに、スキルチェックがあったんですけど、音の出し方がうるさいと言われました。日本の教室ではちょうどいいんですけど、ドイツでは部屋が広くて音が響きますから、耳を使うのが大事なんだな、と思いました。
-レッスンはドイツ語でしたか?
北村 英語オンリーでした。
-練習室が豊富にあるそうですが。
北村 はい、15室ほどありましたが、取り合いでしたよ。部屋の前に、2時間区切りで予約票が貼ってあって、そこに名前を書き込む形でした。でも、実は私が到着したのは、みんなが到着する1日前だったので、取り放題だったんですよ(笑)。なので、練習室の確保は心配ないはずだったのですが、しょっちゅう他の人たちから、代わってくれと言われました。、日本人は、英語が話せなくて何も言えないから、という感じで名前を覚えられてしまって。私の名前が書いてあると、勝手に入って使っている人もいたりして、それが大変でしたね。
-そのときは、ノーと言ったんですか?
北村 その人がコンサートに出て、自分は出ないというときには、けっこう譲りましたよ。全部で10時間くらいは譲ったと思います。それは別に良かったんですけど、もうちょっと英語が話せたらと思いましたね。
-レッスン以外の時間は何をされていましたか?
北村 必ず毎日1時間はお昼寝をしていました(笑)。あと、夕ご飯後、練習も終わった後は、カフェテリアでウノをしたり、ゲームしたり、お茶したり・・・。みんなで自由に過ごしてましたよ。トランプやウノは、英語が話せなくてもみんなと楽しめますから(笑)。
-街の様子はどんな感じですか?
北村 治安が良いのか悪いのか分からないくらい、人が少なかったです(笑)。でも、とにかくキレイな所でした。練習室から見える森林の風景なんて、3時間くらい眺めていられるんじゃないか、っていうくらいキレイでした。
-雰囲気としては、ドイツの古い街という感じですか?
北村 そうですね。たまに、おじいさんやおばあさんが散歩しているのを見かけるくらいの、静かな街でした。
-どこか遊びに行った所はありますか?
北村 日曜日に、サイトシーイングという企画があって、ウタ先生が車で連れて行ってくださったんです。フルダのお城に連れて行っていただいたんですが、ガイドも英語だったので、何を言っているか分かりませんでした・・・。それよりも、自分たちで歩いて行けるところまで行ってみようといって、お店屋さんを見て回ったのが楽しかったですね。薬局とかも、日本とは違うので面白かったです。
-宿泊先はいかがでしたか?
北村 すごくキレイで、何の問題もありませんでした。タオルも置いてあったりして。
-ルームメイトはどんな方でしたか?
北村 アルメニア人の方でした。とてもいい人で、ピアノもすごく上手な人でした。外人の方って、日本人ほど気を使わない人が多いですよね。それが逆に良かったです。こちらも気を使わなくて済みますし。
-会話は英語でしたか?
北村 はい。彼女はアメリカ人の旦那さんがいるので、英語はもちろん、ドイツ語、ロシア語、アルメニア語・・・なんでも話せる人でした。
-宿泊先と講習会場はどのように移動されたんですか?
北村 真隣だったんです。徒歩30秒くらいでしょうか。レストランと宿泊先が一緒で、その向かいのお城が練習室だったんです。
-お城ですか!?
北村 すごくキレイでしたよ。夢のようでした。
-レッスンをした場所は、どんな所でしたか?
北村 お城の中でした。聴講は可能なのですが、最初はみんな、自分の練習ばかりしていたんです。それを見たウタ先生が、「この講習会では、練習だけではなくて、他の人の演奏を聞く事も大事だ。」と言って、練習室を使用禁止ににしたんですよ(笑)。なので、他の方のレッスンも聴講してましたが、ドイツ語だと分からないのが辛かったですね。
-今回は言葉の壁が大きかったということですね。
北村 そうですね。レッスンのときは、先生が実際に弾いて見本を見せてくださったりするので、おっしゃっていることは分かるんですけど。
-聴講は、いい勉強になりましたか?
北村 はい。上手な人やファイナルに残った人の練習を見ていると、レッスンで先生に言われたことを、どのように本番に持っていくのか、というのを見られてよかったです。自分でどう納得して直していくのか、という部分も客観的に見られるので、「この人はこの先生に見てもらってよかったな。」というのが分かったりして、おもしろかったですよ。
-語学レッスンはいかがでしたか?
北村 1時間半すべて英語ですので、2週間だけでしたが、ずいぶん分かるようになりました。教材も200枚くらいもらいましたし、とても熱心に教えてくださいました。
-語学レッスンを受けられた人は少なかったそうですが。
北村 少なかったですよ。英語レッスンに2人、ドイツ語レッスンに4人だけでした。ほとんどプライベートレッスンという感じでした。でも、最初の数日間はABCからだったんです!それはさすがに分かるよ!って思いましたけど(笑)。
-最終的には何を勉強したんですか?
北村 途中先生が変わったんですけど、ある先生は、音楽の専門用語を教えてくださいました。西洋音楽の古典用語とか。
-海外で学ぶと、理論が分からないという方が多いですものね。
北村 そうですね。専門も英語で勉強できたのは良かったです。しかも少人数レッスンでしたから。
-講習期間中のお食事はいかがでしたか?
北村 バイキングだったんですよ。朝は、ずっと毎日パンとハムという同じメニューでした。お昼は、お肉料理が多くて、スープに、メイン、ポテトにデザートという感じでボリュームたっぷりでしたね。その代わり、夜はソーセージとポテトだけとか、チーズトーストだけとか、とても質素でした。でも、すごくおいしかったですよ。バイキングですから、量も自分で決められるし、好きなものを食べられたので、食事は問題なかったですね。もともと私は、好き嫌いなく何でも食べるタイプですから。でも、中には、全然食べられずにいた方もいらっしゃいましたね。
-外食はしましたか?
北村 最後の日にランチをしました。けっこう高かったですけど、チキンのグリルを食べました。あと、サイトシーイングのときは、ウタ先生が全員に、ケーキとお茶をご馳走してくれたんですよ。ケーキはすごく大きくておいしかったです。
-では、食べ物では、ホームシックにはならなかったんですね。
北村 はい。不安な人は、インスタントの味噌汁とか持って行くといいと思います。お湯も沸かせますし、電子レンジも使えますから。
-海外の人と上手く付き合うコツはありますか?
北村 笑顔を大事に、たくさんコミュニケーションを取ることでしょうか。言葉が分からなくて、内向的になってしまう人もいますけど、自分から話していかないと、何も始まりませんから。
-最初は戸惑いませんでしたか?
北村 ええ、最初はとても。 でも、日本人の方で6年間ロンドンに留学している方がいたので、通訳してもらったり、自分の言いたいことを紙に書いて、添削してもらったりしました。その方が助けてくれたので、本当に心強かったです。ドイツ語が堪能な方もいらっしゃったので、その方にも聞いたりしました。かなり皆さんに助けてもらいましたね
-その方たちとは連絡を取っていますか?
北村 はい。参加した日本人5人で、12月に神戸へ旅行しようという話をしています。とても仲良くなりました。
-そういう出会いも、留学の醍醐味ですね。では、留学中困ったことは何かありましたか?
北村 ガス抜きの水を探すのが大変でした。全部炭酸が入っていまして・・・。ご飯のときにもガス入りの水なので、スーパーに買いに行っていました。あと、レストランの人がドイツ語しか話せないこともあって、それもけっこう困りましたね。そんなときも、ドイツ語を話せる方の助けを借りました。
-講習会に参加して良かったことは何ですか?
北村 やはり、出会いですね。あと、同年代の人たちがとても上手で、刺激になりました。もう一度、頑張ってみようと思いました。
-講習会に行かれるまでは、悩みもあったようでしたが・・・。
北村 はい。でも、行って変わりましたね。海外で勉強するのはいいな、と思いました。
-自分では知らなかった、自分の良い点は見つけられましたか?
北村 課題はたくさん見つかりましたね、それはとても収穫でした。
-留学して成長した部分や、変わった部分はどんなところですか?
北村 演奏するときに、視覚で演奏する、ということを考えるようになりました。たくさんコンサートをしたからかもしれませんが、アピールすることは大事だと思いました。パフォーマンスも勉強になりましたね。
-それはいい経験でしたね。日本とドイツで大きく違う点は何でしょうか?
北村 練習室の大きさです。日本は6畳くらいの場所にグランドピアノが置いてありますが、ドイツでは40畳くらいのところに、アップライトピアノだったんです。天井も高く、すごく響きが良くて、小さめのホールという感じでしたね。グランドピアノを置いてある部屋なんて、まさにホールでした。
-ピアノのコンディションはいかがでしたか?
北村 良かったですよ。調律もしっかりされてましたし。
-それはよかったですね。では、今後留学する人に、何かアドバイスすることはありますか?
北村 もしドイツだったら、絶対的に古典を持って行ったほうがいいということですね。バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンなどは、やっていて当たり前という感じです。今回、私は、ロシアやチェコの曲を持っていったんです・・・。それよりは、シューマンやブラームスなど、ドイツ出身の作曲家の曲を持っていくべきだったと思います。それだけは後悔しています。
-皆さんも参考になると思います。他の方は、ドイツ系で固めてきた方が多かったんですか?
北村 はい。それから、みんなレパートリーをたくさん持ってきていました。資料には少なくても4曲と書いてあったんですが、みんなリストに書ききれないくらい持ってきていましたね。4曲というのは、本当に最低4曲だと思っていたほうがいいです。
-留学前に、しっかりやっておいたほうがいいことはありますか?
北村 練習と英語ですね。練習に関しては、いつも以上に練習したほうがいいと思います。というのは、コンサートはお城の中で弾くことになります。それに出るには、選ばれないといけないですからね。お城の中で弾くチャンスというのはなかなかあることではないですから、せっかく行くなら、それに懸けて行ったほうがいいと思います。
-北村さんは、たくさん練習しましたか?
北村 4〜5時間です。多く感じますけど、もっとやっている人は、そんなものではないですからね。あと3時間くらいはできたかな、と思います。
-皆さん頑張ってらっしゃるんですね。
北村 そうですね、かなり刺激になりました。
-お話していて、講習会に行く前とは変わったなと感じますよ。では、今後の目標は?
北村 以前は、海外に行ったはいいが、帰ってきて仕事がなかったらどうしよう、ということが気になっていましたが、行くことに価値があると思うようになりました。やはり、海外に出てみたいですね。
-もし行くならドイツですか?
北村 はい。これから1年本気で頑張り、来年また講習会に行ってみて、行けそうなら行ってみようかなと思っています。まずは英語を勉強しないといけないですね。英語が出来なければ、先生にレッスンお願いすることも出来ませんからね・・・。
-今、英語は勉強しているんですか?
北村 週1回ですけど。やはり、話せないというのは悔しかったですからね。
-次行くときは、通訳なしですね。
北村 そうできるように頑張ります!
-頑張ってください!今日はお忙しいところ、ありがとうございました。