庭野聡子さん/ピアノ/ウィーン国際音楽ゼミナール /オーストリア・ウィーン

音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。


Image庭野聡子さんプロフィール
2006年武蔵野音楽大学器楽学科ピアノ専攻卒業。2008年武蔵野音楽大学大学院音楽研究科ピアノ専攻修了。ピアノを黒川文子、前原信子、E・アシュケナージの各氏に、ピアノ・デュオをK・ガネフ、J・ガネヴァの両氏に、室内楽をS・ナジ氏、C・ドル氏の両氏に師事。2008年ウィーン国際音楽ゼミナールに参加。



- 今まで講習会などに参加したことはありますか?海外に行かれたことはありますか?

庭野 国内での講習会は参加したことがあります。海外へは旅行などで渡航経験がありますが、ヨーロッパは初めてでした。

- この講習会に行きたいと思った理由やきっかけはなんでしょうか?

庭野 今年の春に大学院を修了し、試験などの都合に合わせる必要がなくなり、自分のペースで勉強できるようになりましたが、仕事との兼ね合いがあり、練習に充分な時間をとることが難しくなりました。何か明確な目標に向かって勉強したいと考え、夏に海外で講習を受けることを決めました。また、恩師が20代にウィーンで勉強され、私が子どもの頃からそのご経験をお話してくださったので、ウィーンはずっと憧れの場所でした。

- 参加者は、どのくらいの人数がいましたか?また、どんな人が参加していましたか?

庭野 正確な人数は分かりませんが、ピアノは20人程度、全体で50〜60人くらい参加していたと思います。日本人や韓国人が多く、半分以上を占めていました。高校生、大学生、社会人と幅広い年代の受講生がいました。

- 講習会はどんなスケジュールが組まれていましたか?

庭野 スケジュールは下記のような感じでした。教授によってレッスン時間や回数は異なりますが、私は期間中に70分〜80分のレッスンを4回受講することができました。毎日、各教授によるレッスンが行われているので、ピアノや声楽などの聴講に行きました。
7月28日  9:00 各クラスのオリエンテーション(大学内)
19:30 オープニングコンサート(ベーゼンドルファーザール)
7月30日 19:30 教授陣コンサート(ベーゼンドルファーザール)
8月 7日 13:00 ディヒラー・コンクール(大学内)
18:30 受講生コンサート(大学内)
8月 8日 19:30 コンクール受賞者コンサート(ベーゼンドルファーザール)
8月10日 10:30 受講生コンサート(ハイリゲンクロイツ)

Image- ウォルフガング・ヴァッツィンガー先生はどんな人でしたか?

庭野 先生は非常に知的で穏やかな方でした。ピアノの技術のみならず、常に音楽に対して真摯な姿勢に感動しました。

- レッスンでは、どんなことを教わりましたか?教わったことで、印象に残っていることはありますか?

庭野 初回のレッスンで一度弾き終わった後に「あなたがまだ満足していないことは何ですか?」と聞いてくださったので、今回の講習会で勉強したいと思っていた響きの問題について直接伺うことができました。また、楽曲の背景や作曲家の心理などについて、ドイツ人の先生からお聞きできたことは、ドイツ音楽を勉強する上でとても有意義でした。テクニック的な面でも、些細な部分についての質問も丁寧に解決してくださいました。

- レッスンは何語で受けましたか?通訳をつけてのレッスンはいかがでしたか?

庭野 レッスンはドイツ語でした。通訳の先生はタイムロスのないよう、配慮してくださいましたが、やはり語学力をつけたいと強く感じました。レッスン以外では英語で個人的なご相談をさせていただきました。

- 練習はどこでしたのですか?どのくらい練習出来ましたか?

庭野 ピアノに限っては、一日の練習はホテル内の練習室(3部屋)で90分、大学内の練習室(5部屋)で90分を予約できました。土日はホテルでの90分のみです。ホテル内の2部屋以外はアップライトピアノでしたし、ホテルのピアノは調律されていないので、環境が充分とはいえないと思いました。

Image- レッスン以外の時間は何をしていましたか?

庭野 自分のクラスや他の教授のレッスンを聴講させていただきました。ピアノのレッスンも非常に勉強になりましたが、特にリート解釈のレッスンの聴講は興味深く、新たな勉強への意欲がわきました。ほとんどのクラスがお昼過ぎには終了するため、その後はウィーンの街中に遊びに出かけていました。

- ウィーンの街はいかがでしたか?

庭野 大学から見える薄ピンク色の建物がかわいらしいと思って近づいたら、ベートーヴェンが第9を書いた家だった、というように、街中至る所に歴史が息づいていました。ホームレスの人からお金をくださいと言われたり、コンサートのチケットをしつこく売ろうとする人には出会いましたが、予想していたほど、治安は悪くないように感じました。ウィーンの人は独特のプライドがあると聞きましたが、学生と思われるせいか、どこに行っても驚くほど親切にしていただきました。

- どこか遊びに行ったところはありますか?

庭野 ウィーンの中心部であるシュテファン大聖堂や周辺のリンク内は毎日のようにお散歩やお買い物に行きました。範囲は狭いですが、見所があちこちにあり、何度行っても飽きませんでした。レッスンがない土日には、少し足を伸ばしてベートーヴェンの夏の家があるハイリゲンシュタット、音楽家たちのお墓がある中央墓地、シェーンブルン宮殿でのオペレッタ鑑賞などに出かけました。さらに足を伸ばし、世界遺産であるメルクからデュルンシュタインまでのヴァッハウ渓谷で青きドナウを見ることもできました。講習会終了後にはザルツブルグへ旅行に行き、音楽祭と湖水地方を堪能しました。

- 宿泊先はどこに泊まりましたか?対応はどうでしたか?

庭野 ローゼンホテルに宿泊しました。フロントでは英語も通じました。ほとんどが受講生で日本人が多いので安心感はありました。朝食はビュッフェスタイルですが、あまり満足のいく内容ではありませんでした。

- 宿泊先と講習会場はどのように移動しましたか?

庭野 最寄り駅からトラムに乗って20分ほどでした。歩ける距離のようですが、期間中は暑かったのでトラムの利用が便利でした。1週間定期が14ユーロでした。

- ごはんは何を食べましたか?外食は、どのくらいのお値段でしたか?

庭野 ウィーンでしか食べられないものを、とウィーナーシュニッツェルは数回食べました。たいてい10ユーロ前後だと思います。観光客の多いお店は少し割高です。簡単な昼食には、トルコ料理のケバブサンドウィッチは重宝でした。3ユーロで顔と同じくらいの大きさのパンに野菜とお肉がどっさり入って出されます。お肉料理が多いので、「ノルトゼー」という魚介のお店もよく行きました。これも3〜5ユーロ程度です。ほかにマクドナルドなどもありますが、日本での価格を考えると高く感じます。

Image- 海外の人達とうまく付き合うコツはありましたか?

庭野 受講生同士は音楽という共通点があるので、すぐに打ち解けることができました。また地元の人たちも音楽を勉強しに来たというと、とても好意的でした。語学ができなくても、郷に入っては郷に従え、で、きちんと挨拶を交わす習慣は守ることが最初のルールではないかと思いました。

- 留学中に、困ったことなどはありますか?

庭野 ウィーンの街中では英語が通じますし、講習会中は日本人スタッフもいらっしゃるので安心して生活することができました。レッスンなどでも日本とかけ離れたことはなかったように思います。ただ、ほとんどのスーパーマーケットやお店が日曜日は休むこと、休前日は早くお店仕舞いをしてしまうことが、コンビニだらけの日本に慣れていると不便に感じました。

- 今回講習会に参加して良かったと思える瞬間はありましたか?

庭野 今後もヴァッチンガー先生の来日の際などにレッスンを受ける機会がもてるよう、お願いできたことです。また、2週間という長い滞在で外国生活の体験もとても貴重でした。

- 留学して、何か自分が変わったなとか成長したなと思う事はありますか?

庭野 日本ではまずは練習を優先させ、一日の大半をピアノの前で過ごすこともありますが、練習時間が限られていたために、少ない時間の中で効率よく練習し、たくさんの場所に出かけ、目で見て耳で聞いて心で感じる体験は、直接演奏に結びつけることは難しいですが、自分自身の糧になったと思います。

- 日本と留学先で大きく違う点を教えてください。

庭野 現在の日本での指導者はほとんど留学経験がありますし、多くの外国人教授が日本での指導にあたっているので、レッスンにおいてまったく異なった新しい方法がとられているというわけではないように思います。しかし、クラスや楽器にこだわらず、自由に聴講することができる環境は、大変刺激的で、勉強になりました。また、街やトラムの中で楽譜を抱えていると、地元の人が気軽に声をかけ、励ましてくれました。クラシック音楽が身近で、自分たちの誇りと感じているように思いました。

Image- 今後留学する人にアドバイスしておきたいことなどありますか?

庭野 自分自身の反省でもありますが、レッスンでの楽曲はある程度仕上がったものと新しいものを組み合わせるなどの準備が必要と思いました。また、通訳がいるとはいえ、やはり語学力もある程度身につけていくことが大切だと思います。

- 留学前にしっかりやっておいた方がいい事は何かありますか?

庭野 レッスンや語学については前の質問の通りです。気候などの日本で得られる現地情報は、できるだけ活用しておくべきだと思いますが、やはり現地に行ってみなければわからないことも多かったです。

- 今後の活動は?進路などありましたら教えてください。

庭野 現在は指導と演奏の仕事を両立しています。演奏の仕事では、楽曲が指定される場合が多いのですが、将来は自分のレパートリーをまとめて発表できる機会がもてるように勉強を続けていきたいと思います。

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